男のコラージュ作品には必ず人の目がちりばめられていた。
その独特な作風から一般受けはしないものの、一部に熱狂的なファンを持ち、根強い人気を誇っていた。
そんな彼へのインタビューを兼ねてアトリエへ訪問した私は、そこが意外と整理されていることに驚く。
昨日今日で片付けられるような綺麗さではない。
「散らかっていると落ち着かないんですよ。潔癖症なので」
枯れ木のようにやせ細った彼は肩をすくめながらそう言った。
奇抜な色遣いと構図、生理的な嫌悪感を表現しつつもどこか小脳の部分で惹かれる悪夢のような作品を作る彼には似つかわしくなく、どこにでもいそうな青年だ。
インタビューは滞りなく進む。この手の人間にありがちな偏屈さもなく、とてもしゃべり慣れているようだったので、特別あとで修正していく必要もなさそうだ。
いや、ある意味肩すかしかもしれない。彼のファンももっと奇抜で電波な発言をするような人間性を求めているかもしれないし、私も本当はそういうところを期待していた。
「ところで、作中に必ず人間の目が出てきますよね? あれにはなにか意味というか、メッセージのようなものがあるんですか?」
「好きなんです」
「人間の目が?」
「というか、人の目をくりぬくというのが」
「くりぬく?」
「写真をですね、こう、切るじゃないですか。あれがくりぬく作業みたいで、そう、興奮するんです」
「なるほど……」
すると、彼はじっと私の目を見て尋ねた。
「あの……お願いしてもいいですか?」
「はい?」
「写真、撮らせてもらいたいんです」
ぞくりとした。
おしまい。
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無題
2009/09/07(Mon)14:32
今度、神戸でやってる「だまし絵展」に行くつもり。
「目」の作品もあるといいな。。。
No.1|by パキパキ|
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