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ししるいるい

語感の割に悲惨な意味合いを持つ。

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2024/03/19(Tue)19:29

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某オープニングを見ながら。

2009/08/25(Tue)16:38


男のコラージュ作品には必ず人の目がちりばめられていた。
その独特な作風から一般受けはしないものの、一部に熱狂的なファンを持ち、根強い人気を誇っていた。

そんな彼へのインタビューを兼ねてアトリエへ訪問した私は、そこが意外と整理されていることに驚く。
昨日今日で片付けられるような綺麗さではない。

「散らかっていると落ち着かないんですよ。潔癖症なので」
枯れ木のようにやせ細った彼は肩をすくめながらそう言った。
奇抜な色遣いと構図、生理的な嫌悪感を表現しつつもどこか小脳の部分で惹かれる悪夢のような作品を作る彼には似つかわしくなく、どこにでもいそうな青年だ。

インタビューは滞りなく進む。この手の人間にありがちな偏屈さもなく、とてもしゃべり慣れているようだったので、特別あとで修正していく必要もなさそうだ。
いや、ある意味肩すかしかもしれない。彼のファンももっと奇抜で電波な発言をするような人間性を求めているかもしれないし、私も本当はそういうところを期待していた。

「ところで、作中に必ず人間の目が出てきますよね? あれにはなにか意味というか、メッセージのようなものがあるんですか?」
「好きなんです」
「人間の目が?」
「というか、人の目をくりぬくというのが」
「くりぬく?」
「写真をですね、こう、切るじゃないですか。あれがくりぬく作業みたいで、そう、興奮するんです」
「なるほど……」
すると、彼はじっと私の目を見て尋ねた。
「あの……お願いしてもいいですか?」
「はい?」
「写真、撮らせてもらいたいんです」



ぞくりとした。



おしまい。


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No.149|ショートショートのようなものComment(2)Trackback()

実際

2008/11/04(Tue)22:52



一月「正月!」
二月「バレンタインデー!」
三月「ひなまつり!」
四月「入学式!」
五月「端午の節句!」
七月「七夕!」
八月「夏休み!」
九月「お月見!」
十月「ハロウィン!」
十二月「クリスマス!」

十一月「……」
一月「で、お前は何?」
十一月「くっ……」

六月「まぁ、気にすんなって」
十一月「祝日のないお前と一緒にすんな!」


---------- キ リ ト リ ----------

六月は僕の誕生日なので世間一般ほど嫌ってませんでした。
十一月は文化の日とかあるし、文化祭でいいんじゃないかな。

No.134|ショートショートのようなものComment(6)Trackback()

SS「明晰夢」

2008/06/14(Sat)12:14

「よくあるんだよね。明晰夢ってやつ? 夢の中でさ、あぁ、これは夢なんだなって気づくんだよ」

「えー、うそだぁ」

「ほんとだって」

「じゃあどうしてこれが夢だって気づけないの?」

No.95|ショートショートのようなものComment(0)Trackback()

そうさくこばなし「切り取りライン」

2008/05/21(Wed)18:02

     ---------- キ リ ト リ ----------


 ある日青年の腹部にキリトリ線が現れた。
 丁度体の中心線に沿うように十センチばかりの破線が臍の上に引かれていた。


 きっと誰かのいたずらに違いないと思ってしばらくはそれを放置した。
 だがいくら経っても消える気配を見せない。
 マジックや何かのいたずら書きとは違うらしく、どれだけこすっても何を付けても消えることはなかった。

 心配になった青年はついに医者に診てもらうことにした。
 医者の見解ではどうにも何か痣のようなものであり、特に何か異常は見られない、ということらしい。

 それにしたってこんなにもはっきり『キリトリ』という文字が浮かび上がることなどあるものだろうか?
 スティグマにしたって神秘性のカケラもない。これは何らかの意図があるのでは、と青年は思った。

 キリトリ線の意図。そんなものはたった一つしかない。

 切り取れ、ということだ。


 このままではあまりに寝覚めも悪いので、青年は医者に頼み込んだ。
 医者自身も前例のないその事象に興味が湧かないわけがない。
 しぶしぶ、という体を装って青年の開腹手術が行われることとなった。


 数日後、手術はいよいよ始まった。医者は高鳴る鼓動を抑えてキリトリ線にメスを入れる。
 特に何の変化は見られなかった。もしかすると、中に何かがあるのかもしれない。
 腹を開き、中を覗き込んだ。


 明るく照らされた腹部に、小さな黒い点がある。
 目を凝らして見てみると


 --・--・--・ ヤ  マ オ リ --・--・--・

 と書かれていた。





                       了
     ---------- キ リ ト リ ----------





*あとがき*
僕の右腕に謎の点線が発生したので思いつきました。
(多分どこかで擦った傷)



No.85|ショートショートのようなものComment(2)Trackback()

創作「ランダム」

2008/03/20(Thu)16:24

「あ、お袋? 俺俺。俺だけど。……うん、そう。タカシ。元気してる? ……そうなんだ。うん。

 あぁ、俺は元気だよ。うん、ちゃんと大学にも通ってるし。…………食べてるよ。……いや、彼女はいないけどさぁ。

 ……それは気が早いんじゃないかなぁ。だってまだ俺二十一だぜ。さすがにねぇ。うん。


 ……あぁ、いや、別に。何でもないんだけどさ。ちょっと元気にしてるかなって思っただけだから。

 それよりお袋、こっちが名乗る前に俺の名前言わないほうがいいって。ほら、俺俺詐欺とかさ。

 ……それもそうだな。時代遅れだよなー。でもまぁ気をつけてよ。うん。……分かってる。……うん。……うん。……うん。

 それじゃあ、これからバイトだから。……うん。分かった。じゃ」





「どうした、タカシ」


「パソコンでランダムに電話かけたら本当に実家だった……」





---------- キ リ ト リ ----------


実際振り込め詐欺ってまだあるの?

No.58|ショートショートのようなものComment(0)Trackback()