---------- キ リ ト リ ----------
ある日青年の腹部にキリトリ線が現れた。
丁度体の中心線に沿うように十センチばかりの破線が臍の上に引かれていた。
きっと誰かのいたずらに違いないと思ってしばらくはそれを放置した。
だがいくら経っても消える気配を見せない。
マジックや何かのいたずら書きとは違うらしく、どれだけこすっても何を付けても消えることはなかった。
心配になった青年はついに医者に診てもらうことにした。
医者の見解ではどうにも何か痣のようなものであり、特に何か異常は見られない、ということらしい。
それにしたってこんなにもはっきり『キリトリ』という文字が浮かび上がることなどあるものだろうか?
スティグマにしたって神秘性のカケラもない。これは何らかの意図があるのでは、と青年は思った。
キリトリ線の意図。そんなものはたった一つしかない。
切り取れ、ということだ。
このままではあまりに寝覚めも悪いので、青年は医者に頼み込んだ。
医者自身も前例のないその事象に興味が湧かないわけがない。
しぶしぶ、という体を装って青年の開腹手術が行われることとなった。
数日後、手術はいよいよ始まった。医者は高鳴る鼓動を抑えてキリトリ線にメスを入れる。
特に何の変化は見られなかった。もしかすると、中に何かがあるのかもしれない。
腹を開き、中を覗き込んだ。
明るく照らされた腹部に、小さな黒い点がある。
目を凝らして見てみると
--・--・--・ ヤ マ オ リ --・--・--・
と書かれていた。
了
---------- キ リ ト リ ----------
*あとがき*
僕の右腕に謎の点線が発生したので思いつきました。
(多分どこかで擦った傷)
PR
無題
2008/05/23(Fri)02:45
No.1|by 悠季|
URL|Mail|Edit