ししるいるい

　境内の脇にある小屋は向かって右半分がおみくじを引く場所で、左半分がお守りやお札などが売られている。
　女は拳を握り締め、鼻息荒く左半分へと向かっていた。
　その左半分に巫女の服を着た中年の女性が座っていた。大方神主の妻か何かだろう。
　正月の売り子はバイトだ。
「ちょっと」
　ものすごい剣幕の女とは別に目を半分閉じた穏やかな様子でいらっしゃいましと巫女は言う。

「ここのお守り、恋愛運うなぎのぼりって言うから買ったんだけど」
「えぇ、うちのお守りは効果覿面ですよ。特に色恋沙汰に関する事はね。もう買った途端に恋愛運急上昇」
「馬鹿言わないでよ。彼氏とここでお守り買った次の日に別れちゃったじゃない！」

　すると巫女はこう言った。


「ご利益ばっちりじゃないですか」