前々から中村氏のイラストが表紙だったので気になっていたものの
なんとなく手が出せなかった代物「夜は短し歩けよ乙女」
偶然図書館で見つけたため借りて読みました。
なんとも不思議な物語。
すばらしきエンターテイメントでありました。
中身がない? 言ってろ。
現実と幻想とが織り交じった奇妙な世界観ではありますが、その一見相反する二つのそれを見事に融合させている作品です。
吾輩は猫であるのような雰囲気(
あくまで雰囲気!)でありながら舞台は現代の大学生
レトロでありながら新しいというのは京都の町そのものを表しているようで、その不思議な感じが心地の良い余韻を与えてくれました。
最初の数ページはちょっと肌に合わないなと思ったけれど、読み進めていくうちに世界観を理解できて
あぁ、これ、ファンタジーなんだ
と分かったらもう楽しくてしょうがなかった。
まるでパレードを見ているよう。
狭い世界の中に色々なものがぎっしりと詰まってる。
たくさんの人物がひとつの町に集まって、出る人出る人誰かとしっかりつながっている。
一つ一つのピースを迷いなくはめられたようなあのお腹のそこから湧き上がってくるようなあの感覚に近いかもしれません。
正直、小説におけるリアリティなんて最低限入れておけばいいんだ。
問題は読者の気持ちを楽しくできるかどうかであって
くだらないリアリティなんてそこらに転がってるんですよ。
そういうのに飽き飽きしてるから小説を読むのに、小説読んでる時でまでうじうじぐずぐずしなきゃならないとはこれ如何に!
そこのお前。お前のことだよ俺!!
ご、ごめんなさい。
ひとつ不満を挙げるとすれば、最終的に二人がいい感じになっちゃったところ。
「お友達パンチ」は黒髪の乙女が先輩を殴る複線だと思ったんだけどなぁ。
それを除いても面白い作品でした。
毎度毎度の事ながら人を選ぶのでお勧めはしませんよ。
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